ヨエコ

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「沢山の人に支えられて、今の自分がいます」

──その後の体調はどうなんですか?

ヨエコ:リハビリ生活で体調も安定したように思えましたが、この病気は気を付けないと漣から大波へ変化する事の繰り返しです。新生活から二年ほど経った冬(日照時間が短くなると漠然と不安になる)陰性症状である希死念慮が再度強まってしまい、二回目の入院となりました。退院後、またデイケアへ出戻り、スタート地点へ。良くなっては、また数年後に入院。シーソーの繰り返しで、いかに良い状態の方にキープできるかが要となります。私の場合、健康な方の半分以下しか働けないのに、休息は倍必要、という体になってしまいました。一日長時間働くと、次の日は寝込んでしまいます。当時の主治医からも、就労は不可と断言されていました。

そして、去年の今頃は少し無理をしてしまい、状態が悪化、また入院になりました。とにかくまず、自分に合う病院・医師を見つける事が大事でした。私の場合、診て頂いていた主治医と上手くコミュニケーションが取れず、お薬も大量に出ていて副作用の嵐。それも悩みの種でした。しかし、入院を機に転院。今の先生はとても穏やかで優しくて「お薬もだんだん減らしていけるようにしましょう。」と言う方針です。通院しながら体に合った服薬をきちんと続け、自分のペースで動く。病気をちゃんと受け入れ、無理をしない。本当に当たり前な事ですが(無自覚でした)、長年の闘病生活で、やっと気付けた結論です。

日常生活でも、健常な方に比べて、頭が回らなく記憶も悪くなり、できない事は沢山増えました。でも、ただ、声が出る。歌える。神様が声を返して下さった。今の私には、声だけあればもうそれでいいのです。

──そこからどのような変遷を経て今回の復帰に至ったのでしょう?

ヨエコ:まず、近年の入院生活からの説明になります。精神科の病院には、解放病棟と閉鎖病棟というのがあるんです。私はどちらとも経験しました。解放の場合、医師の許可が出れば、指定時間中は病院敷地内なら自由に出かけたりもできます。面会も、(コロナ前だったからかもしれませんが)友人でもOKでした。しかし、閉鎖では入り口に24時間鍵が掛かっていて病棟からは出られなく、面会も家族のみでした。3回目の入院では、重篤な患者さんが多い閉鎖病棟(携帯電話やお財布も預けなくてはいけない)でした。6人部屋で、私以外の患者さんは皆、幻聴・幻覚で怒ったり叫んだりされていて、かなり賑やかな……場所でした。

ただ、どこの病院でも、「デイルーム」という、食事をしたりするスペースがあるのですが、大概そこにはテレビがあるんです。ふらりとデイルームを覗いてみると、歌番組が流れていて、症状が比較的安定している方々が「あ、この曲好き〜!いい曲だよね!」など、嬉しそうにお喋りをしていました。また、昨年の今頃、別の閉鎖病棟の病院に入院になった時も、テレビで歌番組が流れていると皆集まって来て、一緒に口ずさんだり……それを見て、涙がポロポロ出て来ました。

こんなに限られた生活の中での小さな自由を、人は音楽に使い、楽しんでいる。歌が人を救っている……と目の当たりにしました。そこから退院に向けて、また音楽活動を頑張ろうという決心が着いたのです。

──何度も人生のどん底を味わいながら、その度に音楽に鼓舞されてきたんですね。

ヨエコ:はい。入院直後は、倦怠感でベッドから動けなく希死念慮で一杯でしたが、新たな決意をしてからは、体が多少キツくても、1日2回病棟の廊下を何往復か歩く練習を始めました。同部屋のお婆ちゃまと一緒に、バリアフリーのバーを使って筋トレらしき事もしてみたり。ゆっくり脳が休まったのと、体へのセルフリハビリも頑張った甲斐があり、退院した後は身体が動くようになりました。また、川崎さんのサーチ力をお借りして(一番辛かった入院待ちまでの1ヶ月間、電話で毎日励ましてくれ、私にとっての命の電話でした)、色々な福祉サービスにも助けて頂きました。

例えば私の場合現在も、食事を作れず栄養管理ができないので(飲むゼリーなどになってしまい栄養失調になってしまう)、週1回訪問介護や定期的な見守りを受けております。ヘルパーさんに、一週間分の冷凍できるおかずを作って頂き、毎日解凍チンして食べる。好きなのでカレーが多いのですが、先日は「インスタントコーヒーや味噌を入れるとコクが出て美味しい」と聞き、まずはコーヒーバージョンを作って頂きました。確かに味に深みが出てる!と思いました(笑)。

そんな風に、音楽関係の方々以外にも、沢山の人に支えられて、今の自分がいます。今度は、私も何か恩返しをしたい!そして、同じように病気で苦しむ方々が少しでも笑顔になる方法……デイルームで見た光景。私にもできる事は……?歌う事、音楽しかない!という結論に至ったんです。こうして、自身の活動を本格的に始めることになりました。

次ページ:「音楽を通して自分も「社会や人に貢献したい!」」
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